ピラティスを深く学び始めると必ず出会うのが「マシンピラティス」です。マシンピラティスは、専用機械を使って体幹強化や姿勢改善を効果的に行うトレーニング法で、ピラティス創始者ジョセフ・ピラティス氏が考案した本来の姿と言えるでしょう。
ピラティスマシンとは?なぜ機械を使うのか
ピラティス専用マシンは、有名な「リフォーマー」以外にもキャデラック、チェア、バレルといったマシンがあり、負荷を追加したり、動きのサポートをしたりと、エクササイズのバリエーションを増やし、一人ひとりの状態に合わせたエクササイズを提供します。
ジョセフ・ピラティスというドイツ人看護師が第一次世界大戦時に負傷兵のリハビリに用いたのがピラティスの始まりであり、身体に負荷をかけずにいかに回復させられるのかを考えられています。そのため、筋トレやスポーツのような激しい運動は難しい高齢者や体力に自信のない方にも始めやすいエクササイズなのです。
それらの機械を使用することでマットピラティスだけではできない、600種類のエクササイズを可能にしました。マシンピラティスでは体に掛ける負荷が自由に調整できますし、マシンが身体の動きをサポートしてくれるため、腰が痛い方や体力に自信が無い方でも安心して取り入れることができます。
主要ピラティスマシンの種類と特徴
1. リフォーマー(Reformer)
ピラティスマシンの中で最も代表的なのが、ピラティス氏が一番最初に考案したとされているリフォーマーです。身体をリフォーム(改良)できる万能なマシンという事から、その名がつきました。
リフォーマーの構造
- 横に長いベッド状のプラットフォーム(キャリッジ)が特徴で、キャリッジはスプリングによって抵抗を提供し、それがレールの上を前後にスライドします
- キャリッジという平らなスライドするベッドにフットバー、ショルダーレスト、ヘッドレスト、そして2本のストラップが付いています
- スプリング (Springs): リフォーマーに取り付けられた、さまざまな強度と長さのスプリング。これらのスプリングは、トレーニング時に抵抗や補助を提供する役割を果たす
リフォーマーの効果
- 座位、立位、横向き、腹臥位、仰臥位など、さまざまな体勢で使用可能で、関節への負担が少なく、流れるような流れを実現します
- 筋力強化、柔軟性向上、姿勢改善に大きな効果があります。特に体幹の安定性を高め、全身のバランスを整えることで、腰痛や肩こりの軽減、怪我の予防に効果的です
- スプリングの強度を変えることで、自分の体力や目的に合わせて負荷を細かく調整できます
項目 | 詳細 |
---|---|
エクササイズ数 | およそ100種類ものトレーニングを行うことが可能 |
価格相場 | 概ね25〜80万円ほどの価格帯、40万円前後のマシンが多い |
設置サイズ | 畳一畳分ぐらいの可動範囲 |
2. キャデラック(Cadillac)
キャデラックは、大型の支柱フレームにスプリングやバー、ストラップが取り付けられたマシンです。キャデラックはプラットホーム(台)が可動せず純粋にバネが引っ張る方向からの負荷やバネのサポートが主な刺激を生むため、リフォーマーのように色んな箇所を同時にコントロールしながら動かさなくても良いです。
キャデラックの特徴
- 左右をバラバラに動かして部分的に強化することができ、アクロバティックなエクササイズをとることも可能
- 身体を支えてくれるバーや軽い負荷をかけられるバネ、脚をつるす台などを取り付けることで、起き上がるのが難しい状態でも安全にトレーニングする事を可能にしました
- 初心者の方はキャデラックがあるスタジオでマシンピラティスを始めると良いとされています
項目 | 詳細 |
---|---|
価格相場 | 約30〜90万円前後の価格設定 |
適用対象 | リハビリ、初心者から上級者まで |
主な効果 | 部分的な筋肉強化、安全なトレーニング環境 |
3. チェア(Chair)
チェアは、ジョセフ・ピラティス氏が小さなアパートに住むクライアントのために考案したと言われている椅子型のマシンです。
チェアの特徴
- 椅子のような形でハンドルとペダルが付いているマシンです。リフォーマーなどに比べサイズは小さいものの、立位、座位、仰臥位、伏臥位等など様々な体勢で多くのエクササイズが行えます
- 特に体幹や腕・脚の強化に向いています
- 他のマシンと比べて小ぶりですがエクササイズバリエーションは豊富です
4. ラダーバレル(Ladder Barrel)
酒樽(バレル)のようなカーブの丸みのある部分とハシゴ(ラダー)で構成されたマシンです。
ラダーバレルの特徴
- 特に背骨の伸展、屈曲、側屈のエクササイズに効果的です
- バランス力やコントロールが求められ、やや中級者〜上級者向けでバレエやダンサーの方にオススメです
- 体の柔軟性を重視するエクササイズに最適です
5. スパインコレクター
背骨を丸める・反らせる・曲げる・捻る動作が可能な「スパインコレクター」などもピラティスマシンの重要な一種です。背骨の可動性向上と姿勢改善に特化したマシンです。
マシンピラティスの具体的な効果
身体面での効果
姿勢改善効果
- インナーマッスルが強化されると身体のバランスが整って姿勢改善につながり、正しい姿勢を維持できるようになります
- 負荷・補助を調整できるため、自分のペースで筋肉を強化して体調不良(肩こり、腰痛、頭痛など)の改善に役立てることができます
代謝向上効果
- マシンピラティスは全身の筋肉を強化するものなので、全身の筋肉量が上がって基礎代謝の向上にもつながります
- ピラティスのムーブメントと呼吸法で身体の歪みをなくし、多くの酸素を身体に取り込みながら運動することで、血流が改善されます
メンタル面での効果
- ピラティスのエクササイズには自律神経を整える効果もあります。脳と全身のつなぐ神経が活発になるため、身体だけでなく脳の状態、心の状態を良くしていけます
マットピラティスとの違い
マットピラティスにはマシンによるサポートがないため、バランス系のエクササイズの難易度が上がりますが、マシンの取り扱いをしなくていいので、呼吸や身体の内部に意識を向けやすいというメリットがあるでしょう。
マシンピラティスではスプリングによって部分的に負荷をかけることができるので、強化したいところを集中して強化できるなどのメリットがあります。リフォーマーによって体幹を安定させながら正しく可動域を広げてトレーニングを行うと、強化しながら筋肉を柔らかくしなやかに改善できるでしょう。
比較項目 | マシンピラティス | マットピラティス |
---|---|---|
初心者適応 | マシンサポートで正しいフォームが身に付きやすい | 自重のみで難易度が高い |
負荷調整 | スプリングで細かく調整可能 | 自重のみで調整困難 |
価格 | 比較的高額 | 一般的にマシンピラティスより低価格で行うこともできます |
場所 | 専用スタジオが必要 | マット一枚で自宅でも可能 |
ピラティスマシンの価格相場と選び方
マシン別価格相場
マシン名 | 価格相場 | 特徴 |
---|---|---|
リフォーマー | 25〜80万円(平均40万円前後) | 最も汎用性が高い |
キャデラック | 30〜90万円前後 | 安全性が高く初心者向け |
チェア | 20〜50万円前後 | コンパクトで多機能 |
フルセット | 約140万円位(リフォーマー・キャデラック・チェアー・バレル) | スタジオ開業向け |
自宅用、折りたたみ用のマシンピラティスの相場は30万円前後から50万円以上と差があります。個人で購入できるマシンもありますが、数十万円と高額なので、レッスンに通う方が金額的に安く済みます。
マシン選びの重要ポイント
1. 使用目的の明確化
- 家庭用かスタジオ用か、どちらの環境で購入する場合でも、サイズや設置スペースを考慮する必要があります
- 自宅では折りたためるマシンの方が省スペースになります
- スタジオで使用する場合は、耐久性や多機能性が重視されます
2. 品質と安全性
- 本体の材質には木製、鉄製、アルミニウム製などがあり、それぞれに適した製造方法でなければ強度や安全性に影響が出ます
- レールはスムーズに滑るか、ストッパーがきちんと機能するかなど、安全にかかわる部分はとくにチェックしておきたいところです
3. メーカーの統一
- メーカーが異なるとスプリングの性能に微妙な違いが生じ、身体を動かした際の感覚にズレが出る可能性があるため、注意が必要です
おすすめピラティスマシンメーカー
海外有名メーカー
Balanced Body(バランスドボディ)
- ピラティスマシンの開発とインストラクター養成スクールの運営を長年にわたりリードしているアメリカの企業です
- 世界中で非常に評価の高いピラティス教育機関で、PMA加盟団体の中でもトップクラスの実績を持っています
- スプリングやハンドルなどの交換パーツも個別に購入できるため、メンテナンスも容易です
BASI Systems(バジシステムズ)
- BASIピラティスは、ピラティスのオリジナルの教えに忠実であることを大切にしています
- スムーズで静かな乗り心地のキャリッジを特徴としています
- プーリーは高さ調整だけでなく、左右の幅も変更できるため、より柔軟なトレーニング設定が可能です
国内メーカー
Pilates machine Factory Japan
- 特許申請技術によるリフォーマーキャリッジの動きや、こだわりのクッション材を採用している
Ecoleco Fitness
- 日本人の骨格に合わせたコンパクトなピラティスマシン「Recolte」をプロデュースしている
- リフォーマーが約28万円、キャデラックが約30万円と、比較的リーズナブルに導入できるのがポイントです
マシンピラティスを始める前に知っておくべきこと
初心者が注意すべきポイント
正しい指導を受けること
- 一人ひとりの身体の状態・筋力・能力などに合わせて負荷調整ができる点が「初心者こそマシンピラティスはおすすめ」と言われる理由
- マシンが動きをサポートしてくれるため、正しいフォームを身に付けやすい
段階的なアプローチ
- リハビリや身体機能の回復を目的とした低負荷エクササイズから、アスリートが行うような高負荷エクササイズまで対応できる
本格的なマシンピラティスの魅力
リフォーマーの知名度が高まり、「マシンピラティス=リフォーマーピラティス」というイメージが強くなっていますが、実はリフォーマーだけではエクササイズの効果が限定的になる場合もあります。本来のマシンピラティスとは目的・鍛えたい部位・身体の特徴に応じて他のマシンも組み合わせることで、効果を最大化できるものです。
リフォーマーをはじめ、キャディラック、チェア、スパインコレクター、ラダーバレルなど多彩なマシンがあり、それぞれ得意なアプローチが異なります。これらを組み合わせることで、身体の弱点を補強しながら強化したい部分を効率的に鍛えられるのが本来のマシンピラティスの大きなメリットです。
まとめ:あなたに最適なピラティスマシンを見つけよう
ピラティスマシンは、単なるフィットネス機器ではありません。ジョセフ・ピラティス氏が負傷兵のリハビリのために考案した、身体を根本から改善するための精密な装置なのです。
マシンピラティスの最大の魅力は、一人ひとりの身体の状態に合わせて負荷や動きを細かく調整できることです。初心者でも安全に正しいフォームを身に付けることができ、上級者はより高度な動きに挑戦できます。
リフォーマーを含むマシンピラティスにも、マットピラティスにも、それぞれの良さがあります。どちらかだけを取り組むのではなく、両方を組み合わせるのがオススメ。定期的なマシンピラティスで正しい動き方を習得し、通いやすい価格のマットピラティスで日常的に実践すれば、ピラティスのより高い効果を得られるでしょう。
これからピラティスマシンを体験してみたい方は、まずはリフォーマーから始めることをおすすめします。その後、自分の目標や身体の特徴に合わせて、キャデラックやチェアなど他のマシンも組み合わせることで、より深いピラティスの世界を探求できるはずです。
あなたの身体は一生のパートナーです。ピラティスマシンという精密な道具を使って、その可能性を最大限に引き出してみませんか?